エピソード
登場人物紹介
◆サナディー:
言葉を理解するサナダ虫
◆カナコ:宿主
◆ケイコ:カナコの親友
著者プロフィール
カナコちゃんがいるグループは、黒赤ゲームのおかげでみんなしょんぼりしているようだった。なんだかすごく反省してるんだ。
カナコちゃんの体験を聞いてくれたおじさんは、自分はひょっとしたらずっと相手が黒を出してくれていたことに気付かなかっただけなんじゃないかといっていた。看護士の人も患者さんに冷たくしたことを後悔していた。カナコちゃんも自分は赤いカードしか出してこなかったといっていた。どうしてみんながそんなに落ち込むのか、ぼくにはさっぱりわからない。
「みなさん。グループでのシェアは終わりましたか。いいんです、これまでのことは。今日、気が付いてくれれば。今日から生き方を変えればいいだけなんです。いいですか? あなたたちはダイヤモンドの原石なんです。本当ですよ。生まれたときはみんな一緒です。誰だって同じ人間です。その後、幸せに暮らすかどうかなんて、自分が選んできただけなのです。みなさんもまだ遅くはありません。磨けば輝きはじめます。自分をもっともっと磨きましょう。そして、光り輝こうじゃありませんか」
なんだろう、この大きな音。あぁ、BGMか。でもやけに大きな音だな。
「みなさん、目を閉じてイメージしてください。自分が生まれてきたときのお母さんの顔を。若い頃のお母さんです。どんな顔をしていますか? 楽しそうですか? 悲しそうですか? いいえ、微笑んでいますね? そう、あなたが生まれてきて嬉しいからです」
ぼくは、お母さんの顔なんて知らないよ。
「そんなお母さんに対してあなたはこれまで何をしてきましたか? お母さんの気持ちを知っていますか? お母さんにいいたいことはないですか? いいですよ。ここではっきりいってください。はっきりと、大声で、これまでお母さんにいいたくてもいえなかったこと。ずっといいたかったことを叫んでください」
「お母さぁん!」
あ、さっきのおじさんだ。
「ごめんなさい!」
あ、また違う人だ。
「お母さん! どうして! どうして!」
「私、悪い子でした!」
「お母さん! 心配かけてごめんね!」
「おかーさーん!」
「私、うぅぅう。お母さん、私……」
「ごめんねー! お母さーん!」
なんだこれ、みんなが叫び出した。なんだよう、怖いよう。
「お母さん! 私、ずっと、お母さんのことが、本当は大好きだった!」
カナコちゃんまで……。すごい。みんなが叫んでるからもう何いってるかわかんない。音楽もさっきより大きくなってきたよ。どうしちゃったんだよう、カナコちゃん。
「いいですよ、みなさん。まわりの人と抱擁し合ってください。あなたはもうひとりじゃないんですよ! すべてをシェアできる仲間がいるんです!」
「お母さん! お母さん!」
「あぁ、おかあさん。あなたは、あなたは!」
なんだろう、みんなどうしちゃったんだよ。あのおとなしかったカナコちゃんまで、泣き叫びながら誰かと抱き合ったりしてる。ぼくにはよくわからないよ。なんかおかしいよ。
「はい。それではみなさん。また目を閉じて。今度は未来の自分の姿をイメージしてください。まずは十日後、あなたはどうしていますか? これまでとは確実に少し変わっているんじゃないですか? 一ヶ月後はどうですか? 一年後はどうですか? 十年後、あなたはどうしていますか? 明るい未来が見えませんか? さっきもいいましたが、あなたがたは磨けば光るダイヤモンドです。現在はそのダイヤモンドにゴミという先入観や固定観念がびっしりついていただけです。今回のコースで、そのゴミにひびを入れることができました。本格的に磨くのは、これからです」
何いってんだよ。これまでだって、カナコちゃんはカナコちゃんなりに一生懸命生きてきたんだよ。もちろんぼくだってそうさ。
「それから、今日ここで体験したすばらしい時間を多くの人にシェアしてください。シェアするというのは、ひとりでも多くの人にこのベーシックコースを体験してもらうことです。いいですか、あなたがたが今日、ここに参加できたのは、紹介者がいたからです。違いますか? 今日はいろいろなことがありましたね。自分が今日体験したことを振り返ってみてください。すばらしい一日でしたね。ほんとうにみなさんに出会えて良かった。これから、この感動をひとりでも多くの人に伝えてください。それでは、みなさん目を開いてください」
「ユ、ユミ! どうしてここに?」
「おめでとう! カナコ」
いつの間にユミって人が……。どこか外で待ってたんじゃないの?
「みなさん、驚きましたか? そう、今、目の前にいるのは、今日あなたたちをここへ連れてきてくれた、そのきっかけをつくってくれた紹介者です。その人がいなければ、こうしてみなさんに出会うこともなかった。素敵なチャンスをくれた紹介者に感謝してくださいね」
「驚いた? カナコをお祝いしたくって。はい、これ」
「え? 花束? これ、私に?」
「そうよ、私からのプレゼント。コースを無事に終えたお祝いに」
「ありがとう、ユミ!」
「良かったでしょう? 今日、ここへ来て」
「うん!」
良くないよ。ぜんぜん良かったなんて思えない。
少なくとも、ぼくには。
- 寄生虫サナディー
第二十四回
- 寄生虫サナディー
第二十六回