エピソード
登場人物紹介
◆サナディー:
言葉を理解するサナダ虫
◆カナコ:宿主
◆ケイコ:カナコの親友
著者プロフィール
カナコちゃんの告白はまだつづいた。
「それに私、家族のことが嫌いで。嫌いっていうか、ああはなりたくないっていうか。特に母みたいにはなりたくないんです。母は、いつだって父のいう通りで、自分の意見なんてないんです。何を聞いてもお父さんがこういってるから。お父さんに聞いてみないと。父は父で、自分の考えを押しつけるだけ。姉もいるんですが、気が強くって、小さい頃からよくいじめられたんです。どうして私の家族はあんな人たちなんだろうって」
「わかります」
「あと私、本当は自分がいじわるな性格だと思うんです。実際に何かをいったり、行動するわけじゃないけど、心の中ではいじわるなことを考えてしまうんです」
「わかります」
「さっきの中学の頃の好きだった男の子が別の女の子と付き合ったときだって、早く別れればいいのにってずっと思ってた。嬉しそうにそのことを報告してきた子も、私の気持ちを味わえばいいのにって。私って、ついそういうことを思ってしまうんです」
「わかります」
「それは今でも同じで、前に勤めていた会社の上司からよく仕事を頼まれたんですけど、仕事が嫌だっていうより、その人を助けることになるのが嫌だったんです。困って頼んでくるんですけど、助けたくなかった。助けるようなことをしたくなかったんです。困ればいいとまでは思わないんだけど、私には関係ないじゃないって。でもそれも仕事だから断れない。他の同僚に対してもそう。何か仕事で困っていても別に助けてあげたいとは思わないんです。友達は別だけど……。でもそんなだから友達もあまりできないし。私って、本当に嫌な性格だと思うんです」
「わかります」
「だから、私の本心がバレるのが怖いんです。怖いから、話せない。話さない方がいいんです。話したら、きっと嫌われる。今思えば、小学校の頃からそうだったのかも。自分の気持ちをいったら嫌われるんじゃないかって。それなら周りに合わせているだけの方が当たり障りなくていいんじゃないかって。だから、私、ずっと……ずっと……」
「わかります。わかりますよ」
そうだったんだ、カナコちゃん。そんなことを思っていたんだ。ぜんぜん知らなかったよ。やっぱりお腹の中では、頭の中で考えていることまではわからないもんだね。
でも大丈夫だよ。ぼくはそんな話を聞いたって、ちっともカナコちゃんのことを嫌いになんてならない。だって、ぼくにとってカナコちゃんはかけがえのない人だから。
いろいろあったんだね。ぼくはまだカナコちゃんと出会って二年も経ってないから、知らないのは当たり前だけど、嬉しいよ。カナコちゃんのことをいっぱい知ることができて。だから、もう、泣かないで。
「はい、みなさーん。そろそろお互いの話が終わったようですね。いかがでしたか? 相手の気持ち、人が考えていることが少しはわかりましたか? いつだって人は自分のことを一番に考えてしまうものです。でも、それじゃあいけないのです。相手のことをわかって、それを思いやることが、自分のことをわかってもらうことに繋がるのです。では、少しの間休憩を取りましょう。その間にアシスタントが配るお弁当も食べてください。それが終わったら、みなさんにちょっとしたゲームをいくつかやってもらいます。それから休憩時間も私語は慎んでください。では、休憩に入ります」
やっとお昼ご飯だ。もうとっくにお昼は過ぎてるはずなのに。なかなか体力的にハードなスケジュールなんだな、コースって。
お弁当が配られても、カナコちゃんはあんまり食べてくれなかった。
さっきの告白でどうかしちゃったのかな、ずっと黙ったまんま。でもぼくはカナコちゃんが普段そんなことを思っているとは知らなかったし、何よりあれほど自分のことを赤裸々に、しかも会ったばかりの人に話すとは思っていなかったからちょっと驚いているんだ。
それはいいんだけど、なんかちょっと引っかかるんだよね。
なんていうか、こう、カナコちゃんを含めたみんなが誰かに操られているような気がするんだよね。さっきのおじさんだって、カメラマンの人だって。どうしてだろう、どうしてみんな自分のことをあんなに素直に話すのかな。何だかみんな変なんだよね。うまくはいえないんだけど。
カナコちゃんの体温も上がったままのところを見ると、どうやらちょっと興奮しているみたい。それが普段と違うんだ。大丈夫かな。
そんなことより、もっと食べてよ。
食べないと元気になんてならないよ。
- 寄生虫サナディー
第二十二回
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第二十四回