エピソード
登場人物紹介
◆サナディー:
言葉を理解するサナダ虫
◆カナコ:宿主
◆ケイコ:カナコの親友
著者プロフィール
「で、どうしたのよ、カナコ。突然呼び出したりして」
「ごめんね、ケイコ。ちょっと相談したいことがあって……」
「それはいいんだけど、何かあったの?」
「うん。実はね、私、仕事辞めたんだぁ」
「え? なんで? どうして?」
「辞めたっていうか、辞めさせられたっていうか」
「クビ? どうしてまた。あの嫌な上司の仕業?」
「違うの。なんかね、この前、食欲があるっていってたじゃない?」
「いってた。カレーとかシチューとか作るって」
「そのちょっと後からなんだけどね、なんか腹痛がひどくなってさ」
「腹痛?」
「それが変なのよ。普段は何ともないのに、残業を頼まれた時だけ急激にお腹が痛くなるの」
「何、それ」
「わかんない。でね、汚い話だけど、下痢をしているのかっていうと違うの。お腹痛くてトイレに駆け込むんだけど、でないの」
「変なモノ食べたんじゃないの?」
「食べてないよ。本当なんだって」
「で、それが原因でクビ?」
「クビっていわないでよ。契約を打ち切られたから、まぁそうなんだけど。ようはみんな遅くまで働いているのに私だけ腹痛が原因で定時に帰っているのはちょっと、ということになって」
「そんなことで?」
「うん。他にも何かあったのかもしれないけどね」
「で、次はどうするの?」
「まだ決めてない」
「ふーん。ま、でもそれもいいかもね。ずっと嫌だ嫌だっていってたんだから、この機会にちょっとゆっくりしてみるのもいいかもね」
「うん。ちょっと失業保険とかもらいながら、そうしようかと思ってる」
「それよりさ、その腹痛? 病院行ったの?」
「行ってない」
「どうして?」
「私、病院嫌いなの。注射怖いし」
「何いってんのよ、子どもじゃあるまいし。変な病気だったらどうすんのよ」
「うん、でも」
「でもじゃないよ。一回病院行ってきなよ」
マズい。病院に行かれたらマズいよ。
ぼくがいるのがバレちゃうじゃないか。どうしよう。
ケイコちゃん、お願いだから病院に行かせるのは止めてよ。それに、トイレ作戦だって、会社をクビになってからはやってないんだから。カナコちゃんは何ともないんだよ。お腹の中にいるぼくがいうんだから間違いないよ。あぁ、病院へは行かないで。
「でもねケイコ、仕事辞めてからピタッと腹痛も治まったの」
「そうなの?」
「うん。ほんとにそれから一度もないから。それも不思議なんだけど」
「へぇ、よっぽどストレスだったのかもしれないね」
「病院行かなくて、いいよね?」
「自分で決めなよ、それぐらい。治ったんならいいんじゃない? でもまた痛くなるようだったら、病院は行った方がいいと思うよ」
「うん。ありがと」
ふー、良かった。どうなるかと思ったよ。
やっぱりトイレ作戦は危険だったな。もう二度としないでおこう。
「それで、今日私に話したかったことって、その話?」
「ううん。あ、この前ね、ユミに会ったの。街で、偶然」
「ユミって?」
「ほら、短大で一緒だった、私がいうのもなんだけど、ちょっと地味な」
「あぁ、あのユミ? あのよく悪い男に引っかかってた?」
「そうそう」
「4股だっけ? ひどい男だったよね。でも、そんなのに引っかかるユミもどうかと思うけどね。何度か一緒にいるの見たけど、明らかに遊んでる男って感じだったもんね。で、どうだったの? 相変わらず男運悪そうだった?」
「それがね、全然違うの」
「どう?」
「なんか服装もハデだし、胸とか見えそうな服着て」
「へー、露出好きの男でも出来たのかな?」
「そんな感じじゃなくてね、こう、自信に満ちあふれているっていうか。それに声がやたら大きいの」
「ふーん。色々あったのかもね。でも元気そうなら良かったじゃない」
「そんでね、ユミに今度一緒に来て欲しい集まりがあるっていわれたの」
「集まり、って?」
「知らない。いってくれないの。当日のお楽しみだっていって」
「それって、変な宗教じゃないの?」
「違うんだって。私もそう聞いたら、そんなわけないじゃないって笑いながら否定してたもん」
「で、どうするの? 行くの?」
「うん。約束しちゃったから……」
「相変わらず断れないね、カナコは。でも、宗教以外でも変な団体っていっぱいあるから注意した方がいいよ。行くのはいいけど、おかしいなと思ったら帰ってくるのよ? 断れないからって、その場の空気で高いものとか買ったら駄目よ」
「うん。わかった」
「で、話って、そのこと?」
「ううん……」
もう、じれったいなぁ、カナコちゃんは。
もっと他に相談したいことがあるくせに。
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