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登場人物紹介

  • ◆サナディー:
      言葉を理解するサナダ虫

  • ◆カナコ:宿主

  • ◆ケイコ:カナコの親友

著者プロフィール

  • 穴澤賢(あなざわまさる)
    1971年大阪生まれ。
    ペットブログ「富士丸な日々」の管理人。
    著書に「富士丸な日々」、エッセイ「ひとりと一匹」などがある。

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第六回

カナコちゃん、しっかり。
「あ、いえ、あの」
「じゃあさ、それやってくれないかな。悪いけど明日またその会議があってさ。修正した書類を見せないといけないんだよね」
「はい……わかりました。どんなふうに修正すれば」
 
駄目だよ、カナコちゃん。ぜんぜん駄目。あー、もう。よし、ぼくの出番だ。練習の成果を見せてやる。
「具体的にはさ、メーカーの担当者の一覧ってあったじゃない。あの中で自宅電話番号を削除して欲しい担当者の名前を後でメールするから、そこを修正して、更に連絡する順番もちょっと変更して、新たな担当者を追加して……」
「………」
「どうしたの?」
「あ、いえ、何でもありません」
「でね、詳しいことはメールで送るから、夜中に電話してもいい担当者とそうじゃない担当者をね……」
「………」
「どうかした? ここまでの説明は大丈夫?」
「あ、あの、すいません……」
「え? どうした?」
「いえ、あの、ちょっと、トイレに行ってきてもいいですか?」
「あぁ、ごめんごめん。いいから行ってきなさい。じゃあ、戻ってきたらでいいから、ぼくのデスクまで来てもらえるかな。さ、もう行っていいから」
「す、すいません。では、ちょっと、行ってきます」
 
ひとまず成功、ヤッタね。そんなにでないと思うよ、カナコちゃん。だって便意だけをコントロールしてるんだから。練習した甲斐があったよ。さて、問題は自分の意に反した行動をとったときに便意を感じるということをカナコちゃんが気付いてくれるかどうかだね。

「すいません、戻りました」
「あ、そうそう。さっきの続きだったね。今ね、エンドウさん宛にメールを出そうとしてたんだよ。そこに書いている担当者は、電話番号NG、ね。で、夜中にもし海外でアラートが出た場合の連絡順と、新たな担当者というのも一緒に……」
「あ、あの……」
「ん? わかりにくい?」
「すいません。あの……また、ちょっと、トイレ行ってきてもいいですか?」
「どうしたの? 具合でも悪いの?」
「いえ……あの、そういうわけじゃないんですが、ちょっと腹痛が」
「あ、あぁ、そうか。そういうことね。ごめんね、気付かなくて」
「いえ……そういうんではなくて、単純に、ちょっとお腹が……」
「いいよいいよ。ぼくら男にはわからないからさ。さぞかし今日は辛かったでしょう」
「いえ、ほんとにそうじゃ……」
「ちょっと待って、今内線で他の人に聞いてみるから」
「……」
「あ、ハラダさん? 今日って予定ある? あぁ、良かった。今ね、ちょっとエンドウさんにお願いしようとしていた書類があるんだけど、具合、悪いらしくてさ。悪いんだけど、ちょっと頼まれてくれないかな。明日までに必要なんですよ。そう? ありがとう。じゃ、ぼくのデスクまで来てくれないかな。はいはい、じゃよろしくです」
「……あ、あの」
「大丈夫。ハラダさんがやってくれるっていってるから。今日はもう帰っていいよ」
「で、でも……」
「いいからいいから、気にしなくて。女の子なんだからさ」
「すいません。それでは、今日は帰らせていただきます」
「お疲れさまー。ゆっくり休んでくださいね」
「は、はい。ありがとうございます。お先に失礼します」
「あ、ハラダさん。この書類なんだけどさ。クライアントがさぁ……」
 
わーい、うまくいったね、カナコちゃん。
こんなにうまく行くとは思わなかったよ。
これで今日の夜はゆっくりご飯を食べて、ゆっくり眠れるね。

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